基礎知識

PEEKフィルムとは?「フィルム材質:PEEK」の種類と特徴を解説!

フィルム加工は、私たちの生活に欠かせない様々な製品に利用されています。食品包装から電子部品、医療機器まで、多岐にわたる分野でフィルム加工技術が活躍しています。

1. フィルム加工で使われる材質PEEKとは

PEEKは、ポリエーテルエーテルケトン(Polyetheretherketone)の略称で、スーパーエンジニアリングプラスチック(スーパーエンプラ)に分類される高性能な熱可塑性樹脂です。その特筆すべき点は、一般的なプラスチックでは考えられないほどの優れた耐熱性、耐薬品性、機械的強度、そして寸法安定性です。特に、高温環境下での連続使用が可能であり、250℃以上の環境でもその物性を維持できるため、航空宇宙、医療、自動車、電気・電子など、幅広い産業分野でその採用が拡大しています。

フィルム加工においては、このPEEKの特性が非常に重要になります。薄膜でありながら、高い強度と耐久性を要求される用途において、PEEKフィルムはその真価を発揮します。また、耐摩耗性や摺動性にも優れているため、摩擦が生じる部品や、繰り返し動作する部位での使用にも適しています。

2. PEEKの種類:PEEKエンプラの機能と特徴

PEEKはその優れた特性から「PEEKエンプラ」とも呼ばれ、様々なグレードが存在します。基本的なPEEKエンプラは、その高い耐熱性、耐薬品性、機械的強度、そして優れた電気絶縁性が特徴です。これにより、金属代替材料としての利用も進んでいます。例えば、電気・電子部品の分野では、高い絶縁性と耐熱性が求められる基板やコネクタなどに採用されています。また、医療分野では、生体適合性の高さから、インプラント材料や医療機器部品として利用されています。

さらに、耐クリープ性にも優れているため、長期にわたって負荷がかかる環境下でも変形しにくいという特徴があります。これは、精密な寸法精度が求められる部品においては非常に重要な特性です。耐放射線性にも優れているため、放射線環境下での使用が想定される原子力関連施設や、医療機器の殺菌処理などにも対応可能です。

3. PEEKの種類:PEEKテープの機能と特徴

PEEKテープは、PEEKの特性を薄膜のテープ状に加工した製品であり、その用途は多岐にわたります。特に、電気絶縁性や耐熱性を活かした用途でその性能を発揮します。例えば、ワイヤーハーネスの絶縁被覆材や、モーターやトランスの層間絶縁材として使用されます。一般的な樹脂テープでは耐えられないような高温環境下でも、安定した絶縁性能を維持できる点が大きなメリットです。

また、耐摩耗性や摺動性にも優れているため、摩擦が生じる箇所での保護テープとしても利用されます。例えば、ケーブルの摩擦対策や、可動部の摺動性向上など、様々な産業機械や設備においてその耐久性と信頼性が評価されています。粘着剤付きのPEEKテープも存在し、接着性の向上や作業性の簡素化に貢献しています。熱収縮タイプのPEEKテープもあり、複雑な形状への密着や、高い固定力を求める用途で活用されています。

5. PEEKの種類:CA30PEEKの機能と特徴

CA30PEEKは、炭素繊維(カーボンファイバー)を30%配合したPEEKの複合材料です。炭素繊維を配合することで、標準のPEEKと比較して、さらに高い剛性、強度、そして耐摩耗性を実現しています。この強化された機械的特性により、金属部品からの軽量化や、より過酷な環境下での使用が可能になります。

特に、強度と軽量化が同時に求められる航空宇宙分野や自動車分野でその価値を発揮します。例えば、航空機の構造部品や、自動車エンジンの部品など、高負荷がかかる部位での採用が進んでいます。また、優れた寸法安定性と低線膨張係数も特徴であり、温度変化による変形が少ないため、精密部品や高精度が要求される用途にも適しています。摺動特性も向上しているため、摩耗が問題となるベアリングやギアなどの部品にも利用されています。

6. 当社の加工事例

自動車業界向け 耐熱シールドテープの基材等 VA・VE提案

お客様から、耐熱性の高いシールドテープを製造してほしいとご相談を頂戴しました。シールドテープの条件は、誘電性などの機能要件をクリアすることは前提として、「150℃の環境で1,000時間の環境促進試験を行い、フィルムの破損や剥離がないこと」でした。

そこで、当社から、上記の条件をクリアできると想定される、基材と接着剤、そして層構成の組み合わせを複数種、提案し耐熱環境でのテストを繰り返しました。そして最終的にCuの特殊金属箔+耐熱フィルム(PI)の組み合わせとなり、一巻2,000mのボビン巻きにて納品しています。

本事例では最終的に耐熱フィルム(PI)を使用しましたが、耐熱フィルムはPEEKやPETの場合もございます。

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フィルム加工で材質に悩んだ際は、当社にご相談ください

フィルム加工において材質選びは非常に重要です。また、材質の選択の仕方によっても実現できる性能が変わります。「機能性テープ・フィルム加工 課題解決センター」を運営する樫の木製作所では、様々な材質と基材での加工実績があります。お悩みの場合等ございましたら是非「機能性テープ・フィルム加工 課題解決センター」までお問い合わせください。

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